口腔内細菌叢
oral microbiome
Definition
口の中に棲む細菌の集まり。犬猫でも数百種類が確認されており、飲み込まれて消化管に届くため腸内細菌叢との関わりが研究されている。
この項目のポイント
- 口腔内細菌叢は口の中に棲む細菌の集まりで、犬猫でも数百種類が確認されている
- 猫ではドライとウェットで多様性や構成が変わるという報告がある
- 口の菌は飲み込まれて消化管に届くため腸内細菌叢との関わりが研究されている
口腔内細菌叢とは
口腔内細菌叢(こうくうないさいきんそう)とは、口の中に棲んでいる細菌の集まりのことです。犬や猫でも数百種類の菌が確認されており、腸と同じように「たくさんの菌が共存する生態系」として捉えられています。
口の中は、外から入ってくるものが最初に触れる場所であり、温度も湿度も菌にとって暮らしやすい環境です。歯の表面、歯ぐき、舌の上と、場所ごとに条件が違うため、同じ口の中でも菌の顔ぶれは一様ではないと考えられています。
ごはんの形と口の中の菌
猫では、ドライフードとウェットフードで口腔内細菌叢の多様性や構成が変わるという報告があります。何をどう食べるかが、口の中の菌の顔ぶれと結びついているという見方です。どちらが優れているという話ではなく、食事は胃腸だけの問題ではなく口の入り口から関わっている、と理解しておくと役立ちます。
口の中の菌は、歯の表面にバイオフィルムを作って定着します。菌はばらばらに漂っているのではなく、足場を得て集団で暮らすということです。これが歯垢と呼ばれる状態で、犬ではグラエ菌のように口の環境と関わりの深い菌も知られています。
元に戻る速さ
歯石の除去(スケーリング)のあと何もケアをしないと、口腔内の菌は1週間ほどで元の状態に戻るという報告があります。処置は一度きりでも、菌の世界は毎日動き続けているということです。だからこそ、大がかりな処置よりも日々の口腔ケアのほうが話題にされます。
これは腸内細菌の話ともよく似ています。一度整えたら終わりではなく、食べるものや暮らし方によって顔ぶれが日々書き換わっていく、という点が共通しているためです。菌の世界を、一回のイベントではなく続きもののように見る姿勢が求められます。
口の菌は腸に届く
口の中の菌は、唾液やごはんと一緒に飲み込まれて消化管に運ばれます。そのため、口腔内細菌叢の乱れが腸内細菌叢にも影響しうるのではないかと研究が進められています。口と腸は別々の話ではなく、一本の管でつながった連続した場所です。歯のケアの話題が腸活と並べて語られるようになったのも、この連続性が意識されるようになったためです。口の中を整えることが腸を考えることでもある、という視点は覚えておきたいところです。
本項目は一般的な知識の紹介であり、獣医学的な診断・治療を目的とするものではありません。愛犬・愛猫の体調に不安があるときは、動物病院・獣医師にご相談ください。
FAQよくある質問
ごはんの形で口の中の菌は変わりますか?
猫では、ドライフードとウェットフードで口腔内細菌叢の多様性や構成が変わるという報告があります。どちらが良い悪いという話ではなく、食べ方が口の環境に関わるという視点として知られています。
歯石を取ってもらえば口の中の菌はリセットされますか?
歯石の除去のあと何もケアをしないと、口腔内の菌は1週間ほどで元の状態に戻るという報告があります。処置そのものよりも、そのあとの日々のケアが語られるのはこのためです。