なぜフードの切り替えに時間をかけるのか
新しいフードに変えるとき、少しずつ混ぜていくようにと言われます。
これは犬猫の胃腸をいたわるためだけの話ではありません。
腸には腸内細菌叢と呼ばれる菌の集まりがあり、そこに何が届くかによって、優勢になる菌の種類が変わっていくとされます。
フードが変われば、届く栄養素の内訳も変わります。菌にとっては、ある日いきなり主食が入れ替わるということです。
腸内細菌叢には、多少の変化なら元に戻ろうとする力があると考えられており、これをレジリエンスと呼びます。
ただしこの力にも限度があります。
変化が急すぎると追いつかず、菌のバランスが崩れた状態、つまりディスバイオシスに傾くことがあるとされます。
切り替えに日数をかけるのは、菌が新しい餌に慣れる時間をつくるためです。
7日間の割合の目安
健康な成犬・成猫であれば、7日間が一般的な目安とされています。
| 日数 | 新しいフード | 今までのフード |
|---|---|---|
| 1〜2日目 | 25% | 75% |
| 3〜4日目 | 50% | 50% |
| 5〜6日目 | 75% | 25% |
| 7日目以降 | 100% | なし |
次の場合は、14日ほどかけるとよいとされています。
- シニアの子
- 持病があり、食事に配慮が必要な子
- もともと便が不安定な子
- 過去にフードを変えて体調を崩したことがある子
急ぐ理由がないのであれば、ゆっくりで困ることはありません。
毎日見るのは便
切り替え中に見ておきたいのは、体重でも食いつきでもなく便です。
便チェックは、腸で何が起きているかを外から知るいちばん手軽な方法とされます。
硬さ、色、回数、においを、切り替え前の状態と比べてください。切り替えを始める前に、いつもの便を見ておくと比較ができます。
便がゆるくなる背景のひとつに、タンパク質の腐敗発酵があります。
消化しきれなかったタンパク質が大腸まで届くと、腐敗産物が増えてにおいがきつくなることがあるとされます。
においの変化は、量や硬さより先に気づけることがあります。
うまくいかなかったときの戻し方
便がゆるくなったら、ひとつ前の割合に戻して数日そのままにします。
たとえば50%まで進めたところで崩れたなら、25%に戻します。
そこで便が落ち着いたら、また少しずつ進めます。
切り替えを中止してすべて元に戻す必要はありません。
一段だけ戻す、という考え方です。
進みが遅くなっても問題ありません。
腸内細菌叢が変わるには時間がかかるとされているため、日数がかかること自体は失敗ではありません。
ただし、次の場合は切り替えとは別の問題が起きている可能性があります。
動物病院にご相談ください。
- 元気がない、動きたがらない
- 食べない
- 嘔吐がある
- 便に血が混じる
- 下痢が続く
切り替え中に気をつけたいこと
水分を切らさない
便がゆるいと水分が失われやすくなります。
水分補給ができているかを合わせて見てください。
同時にいろいろ変えない
フードとおやつとサプリを一度に変えると、何が合わなかったのか分からなくなります。
変えるのはひとつずつにしてください。
新しいフードだけを責めない
切り替えの時期に、季節の変わり目や引っ越し、来客といった環境の変化が重なることがあります。
腸は環境の影響も受けるとされるため、フード以外の要因も振り返ってみてください。
まとめ
- 切り替えに時間をかけるのは、腸内細菌が新しい餌に慣れる時間をつくるため
- 健康な成犬・成猫は7日、不安がある子は14日を目安に
- 毎日見るのは便。始める前にいつもの状態を見ておく
- 崩れたらひとつ前の割合に戻して数日待つ。中止しなくてよい
- 元気がない、食べない、嘔吐、血便があるときは切り替えの話ではないので受診を
腸の状態を見る言葉は腸活・ケアの用語一覧にまとめています。
便の見方や水分の摂らせ方も、そこから辿れます。
本記事は犬と猫の健康にまつわる一般的な知識の紹介であり、病気の診断・治療・予防を目的とした獣医療行為ではありません。体調に不安があるときは、必ず動物病院・獣医師にご相談ください。


