検査の前に知っておきたいこと
犬猫向けにも、自宅で便を採って送る腸内フローラ検査が出てきました。
結果が届くと、見慣れない菌の名前と円グラフが並びます。
先に大事な前提を書きます。この検査は診断ではありません。
腸に何がどれくらい棲んでいるかを見るもので、病気を見つけるためのものではありません。
すでに体調に不安があるなら、検査キットを買う前に動物病院です。
順番を逆にすると、時間だけが過ぎます。
そのうえで、健康なときの状態を知り、食事を見直す手がかりにする。
この位置づけなら、検査は役に立ちます。
読む順番1 まず、種類の数を見る
結果を開くと、つい個別の菌の名前を探したくなります。
ただ、先に見るべきはどれだけ多くの種類が棲んでいるかです。
これを菌の多様性と呼びます。
種類が多いほど環境の変化に強く、乱れても戻りやすいとされます。
この戻る力が回復力です。
逆に、バランスが大きく崩れて多様性が失われた状態をディスバイオシスと呼びます。
特定の菌が多いか少ないかより、全体として偏っていないかのほうが先に見る情報になります。
読む順番2 2大グループの比率
結果によく出てくるのが、ファーミキューテスとバクテロイデーテスという2つの大きなグループの比率です。
比率が示されると、どちらが良いのかを知りたくなります。
ただ、この比率だけで健康かどうかを決められるものではないとされています。
犬種、年齢、食事内容によって基準が変わるうえ、研究でも解釈は一つに定まっていません。
大きなグループ分けの話なので、傾向を眺める材料として見るのが適切です。
前回と比べて動いたかどうかを見るほうが、絶対値を気にするより意味があります。
読む順番3 名前が挙がる菌
個別の菌を見るのは、ここまで見たあとです。
- フィーカリバクテリウム … 短鎖脂肪酸、とくに酪酸を多くつくる菌
- アッカーマンシア … 腸の粘液層をエサにして棲む菌で、代謝との関わりが研究されている
こうした菌は健康度の目安のように扱われることがあります。
ただし、多ければ良い・少なければ悪いという単純な話ではないとされます。
善玉と悪玉という言い方もよく使われますが、腸内細菌はきれいに二分できません。
優勢な側に味方する日和見菌が実際には多数を占めます。
だから、悪玉菌の数字が高いことそのものより、全体の偏りのほうを見ます。
1回の結果は、写真1枚
ここが検査でいちばん誤解されやすい点です。
腸内細菌のバランスは、食事や環境で動くとされます。
つまり1回の結果は、その日の状態を撮った写真1枚にすぎません。
写真1枚では、良くなっているのか悪くなっているのかが分かりません。
食事を見直したうえで数か月あけて2回目を撮ると、はじめて変化として読めます。
検査を活かすのは2回目からです。1回で終わらせるつもりなら、費用のわりに得られるものは少なくなります。
よくある誤解
検査で病気がわかる
わかりません。
腸内フローラ検査は菌の構成を見るもので、診断ではありません。
症状があるときは受診が先です。
悪玉菌が多いと出たので、すぐ対処が必要
腸内細菌は善玉と悪玉に二分できるものではありません。
全体の偏りと、前回からの変化を見るほうが確かです。
1回受ければ十分
比較する相手がないと変化が読めません。
検査の値打ちは、2回目以降に出ます。
まとめ
腸内フローラ検査の結果は、この順で読むと迷いにくくなります。
- 種類の数(多様性)が保たれているか
- 2大グループの比率は、前回と比べてどう動いたか
- 個別の菌は、ここまで見たあとで
- 数か月後に2回目を受けて、変化として読む
そして何より、体調に不安があるときは検査ではなく動物病院が先です。
検査は健康なときに状態を知り、食事を見直すための道具です。
菌の名前を引きたくなったら、腸内細菌・菌の用語一覧にまとめています。
食事の見直しは食物繊維の摂らせ方からどうぞ。
本記事は犬と猫の健康にまつわる一般的な知識の紹介であり、病気の診断・治療・予防を目的とした獣医療行為ではありません。検査結果の解釈や体調に不安があるときは、必ず動物病院・獣医師にご相談ください。


