食物繊維は、足す前に「どちらが足りないか」を見る

腸によいと聞いて、まず思い浮かぶのが食物繊維です。

ただ、これをひとまとめに増やそうとすると空回りすることがあります。

食物繊維には性質の違う2種類があり、役割が逆に近いためです。

足りないほうではなく、足りているほうを増やしてしまうと、便の状態がかえって崩れることがあります。

ここでは、増やす前に決めておきたいことを順番に整理します。

1 水溶性と不溶性で、仕事が違う

水溶性食物繊維は水にとけてゲル状になります。

腸内細菌のエサになりやすく、便をやわらかく整えるのに役立つとされます。

りんごなどに含まれるペクチンや、ごぼうに含まれるイヌリンがこの仲間です。

不溶性食物繊維は水にとけません。

便のかさを増やして腸を刺激し、動きのリズムをつくるのに役立つとされます。

もうひとつ、レジスタントスターチという消化されにくいでんぷんもあります。

冷めたさつまいもなどに含まれ、大腸まで届いてエサとして使われるとされます。

細菌のエサになるという意味では、水溶性のほうが役割が大きいとされています。腸内細菌が食物繊維を分解してつくる短鎖脂肪酸は、大腸の粘膜のエネルギー源になると考えられています。

2 どちらが足りないかは、便でわかる

判断の手がかりは、毎日見ている便です。

ゆるくて形が保てないときは、水を含んでまとめる働きのある水溶性が足りていないことがあります。

逆に、硬くて小さくコロコロしているときは、かさが足りず腸が動きにくくなっていることがあります。

便の状態のチェックブリストルスケールのページに、見るときの目安をまとめています。成分表を眺める前に、まず便を見るほうが早いです。

ただし、急に便の状態が変わった、血が混じる、繰り返し続くといった場合は、食事の調整で様子を見る場面ではありません。

動物病院にご相談ください。

3 増やすときは、水分とセットにする

ここが一番つまずきやすいところです。

食物繊維は水を抱えて働きます。

とくに不溶性は、水が足りないまま量だけ増えると、かえって出にくくなることがあります。

良かれと思って増やしたのに逆の結果になる、という状況はここで起きます。

水分補給は、繊維を増やすときの前提条件です。

とくに猫は自分から水を飲む量が少なくなりやすいとされるため、ウェットフードやスープの形で水分の入り口を増やす工夫が向いています。

4 変えるときは、ゆっくり

腸内細菌のバランスは数日で入れ替わるものではありません。

急に食事を変えると、腸内環境が追いつかず、一時的に便がゆるくなることがあります。

フードの切り替え方と同じ考え方で、1週間から2週間かけて少しずつ変えていくのが安全です。

よくある誤解

食物繊維は多いほど腸によい
増やしすぎると便の量が増え、ガスが増えて張った感じが出ることがあります。

他の栄養素の吸収に影響する可能性も指摘されています。

足りない種類を少し足す、が基本です。

野菜をそのまま与えれば繊維が摂れる
犬猫は植物性の繊維を分解するのが人ほど得意ではないとされ、大きいままだと消化されずに出てくることがあります。

刻む、柔らかく煮るなど形を整えると使われやすくなります。

サプリで繊維だけ足せば足りる
繊維はエサであって、それを使う菌がいて初めて働きます。

プレバイオティクスという考え方は、菌と、菌の食べるものをセットで見るものです。

まとめ

食物繊維を摂らせるときは、この順番で考えると迷いにくくなります。

  1. 便を見て、ゆるい側か硬い側かを確かめる
  2. 足りないほうの種類(水溶性か不溶性か)を選ぶ
  3. 水分とセットで増やす
  4. 1週間から2週間かけて、ゆっくり変える

量を決めるのは最後です。どちらを増やすかを決めないまま量だけ足すと、方向が合っていないぶん結果が出にくくなります。

腸活・ケアの用語一覧では、毎日の習慣に関わる言葉をまとめています。

本記事は犬と猫の健康にまつわる一般的な知識の紹介であり、病気の診断・治療・予防を目的とした獣医療行為ではありません。便の状態や体調に不安があるときは、必ず動物病院・獣医師にご相談ください。