果物は、なくても困らない。だから選べる

犬がりんごをしゃくしゃく食べる姿はかわいいものです。

SNSでもよく流れてきます。

ただ、先に前提をそろえておきます。

総合栄養食を食べている犬猫にとって、果物は必須ではありません。

犬は雑食に寄った動物なのでおやつとして楽しめる子が多く、猫は肉食に寄った動物なので、そもそも果物から得たい栄養がありません。

これは果物を否定する話ではなく、選ぶ自由がこちらにあるという話です。

必須ではないからこそ、安全とされる種類だけを、体に合う量だけ与えればよい。

この記事では、その選び方を腸の視点から整理します。

まず、量に関係なく避ける果物を覚える

種類と量の話に入る前に、この関門だけは先に通ってください。

  • ぶどう、レーズン: 犬で食べたあとに腎臓の重い障害が起きた報告があります。原因の成分は特定されておらず、安全な量も分かっていません。少しなら大丈夫という判断そのものができない果物です。レーズンパンやお菓子への混入にも注意してください
  • 種のある果物の種: さくらんぼ、もも、びわ、うめなどの種は、割れると害のある成分が出るとされるうえ、丸のみすれば消化管に詰まる大きさです。実を与えるときは種を必ず除きます
  • 柑橘の皮: 実よりも刺激のある成分が皮に集まっていて、消化にも向きません
  • ドライフルーツ、缶詰、人用の加工おやつ: 糖が濃縮されているか、シロップで糖が足されています。人用の加工品にはキシリトール入りのものがあり、犬では少量でも危険とされています

避けるべき食材の全体像は犬猫のおやつの選び方にもまとめてあります。

腸から見た果物の中身

関門を通った果物の中身は、ざっくり言えば水分と糖、そして少しの繊維です。

水分は果物の重さの大部分を占めます。

水をあまり飲まない子にとっては、水分補給をおやつで少し支えられる面があります。

繊維は、水にとけてゲル状になる水溶性食物繊維が中心です。

ペクチンオリゴ糖は腸内細菌のエサになり、短鎖脂肪酸が作られる材料になると考えられています。

りんごやバナナが腸活の文脈でよく名前の挙がる理由はここにあります。

そして糖。

果物が甘いのは糖があるからで、ここが野菜との一番の違いです。

腸によい成分を含むからといって量を増やせば、先に糖の摂りすぎが問題になります。

果物はヘルシー、という人間の感覚をそのまま持ち込まないでください。

与えてよいとされる果物と下ごしらえ

中毒の報告が知られておらず、犬に与えてよい例としてよく挙がるのは、バナナりんご、いちご、ブルーベリー、梨、すいかあたりです。

どれも共通の下ごしらえがあります。

  • 種、芯、皮、へたを除く。りんごの種と芯、すいかの皮は消化に向きません
  • 小さく切る。丸のみするタイプの子は特に、のどに詰まらない大きさまで切ります
  • 味は足さない。はちみつ、ヨーグルトソース、砂糖は不要です
  • 冷蔵庫から出したてより、少し常温に置いたほうがおなかへの負担は小さくなります

猫に与える場合は、この関門を通った果物であっても、ごく少量にとどめてください。

猫は甘みを感じないとされ、果物を喜んでいるように見えても甘さが理由ではありません。

興味を示すなら止めるほどではない、という程度の距離感が実態に合っています。

量の目安と進め方

おやつやトッピング全体で、1日に必要なカロリーの1割以内。

この考え方が広く紹介されています。

果物だけで1割ではなく、ほかのおやつと合わせて1割です。

進め方は新しい食材の鉄則と同じです。

はじめての果物はひと口から。

ほかの食材やフードの変更と同時に始めず、2〜3日は便チェックで様子を見ます。

便がゆるくなったら量が多いか、その子に合っていないかのどちらかなので、いったんやめて便が戻ってから量を減らして試し直すか、その果物は外します。

この進め方は食物繊維の摂らせ方野菜の生か加熱かの使い分けで書いた内容と同じです。

足すものが変わっても、腸との付き合い方は変わりません。

よくある誤解: 果物はヘルシーだから毎日あげたい

正直に書いておきます。

果物を毎日与えることが腸のためになる、という根拠はありません。

繊維やオリゴ糖を足したいなら、果物は効率のよい手段ではありません。

糖が一緒についてくるからです。

腸のために何かを足したいなら、まず主食のフードが合っているかを見直し、それでも足すならおやつではなく食事の設計として考える。

果物はその後に残る、楽しみのための少量枠です。

楽しみのための少量枠、と割り切ってしまえば、果物は犬との暮らしをちょっと豊かにしてくれる存在です。

役割を大きくしすぎないことが、いちばん上手な付き合い方だと考えています。

迷ったときの3つの確認

最後に、果物を前にして迷ったときの確認を3つにまとめます。

  1. その果物自体が安全とされているか。ぶどうとレーズンは量に関係なく与えない
  2. 形と量は適切か。種と皮を除いて小さく、ほかのおやつと合わせて1日カロリーの1割以内
  3. うちの子の便はどう言っているか。与えたあとの便が、その子にとっての答えになります

ここに書いた内容は一般的な知識の紹介であり、獣医療ではありません。持病がある子や治療中の子では、食事内容そのものが治療の一部になっている場合があります。果物を含めて食事を変えるとき、便の乱れが続くときは、動物病院で獣医師にご相談ください。