同じ野菜でも、生と加熱で別のものになる

犬猫のごはんに野菜を足したい。

そう思って調べると、生がいいという話と、加熱しないと消化できないという話の両方が出てきます。

どちらも間違いではありません。

同じ野菜でも、生と加熱では体に入ってからの動きが変わるからです。

つまりこれは、どちらが正しいかではなく、何を狙って足すのかという話になります。

判断の材料になるのは3つだけです。

細胞壁、繊維、水分。

順に見ていきます。

判断材料1: 細胞壁がかたいかどうか

野菜の細胞は、植物特有のかたい壁に包まれています。

この壁は犬猫の消化酵素では分解できません。

壁が壊れないまま腸を通過すれば、中の成分は取り出されないまま便として出ていきます。

生のにんじんを大きめに切って与えたら、そのままの形で便に出てきた。

これを経験した飼い主は多いはずです。

犬猫は人ほど噛んでから飲み込むわけではないので、噛む力で細胞壁を壊すことをあまり当てにできません。

やわらかく加熱すると、この壁がゆるみます。

中の成分が外に出てくるので、体に取り込まれやすくなるとされています。

脂に溶ける成分は、少量の脂と一緒のほうが取り込まれやすいとも考えられています。

一方で、レタスやきゅうりのように、もともとやわらかく水分の多い野菜では、加熱の必要性はぐっと下がります。かたい根菜ほど加熱が効いて、やわらかい葉物や果菜では差が小さい、と覚えておくと迷いません。

判断材料2: どの繊維を足したいのか

食物繊維には大きく2種類あります。

水にとけてゲル状になる水溶性食物繊維と、水にとけずに便のかさを増やす不溶性食物繊維です。

腸内細菌のエサになりやすいのは水溶性のほうで、ペクチンなどがこれにあたります。

細菌がこれを分解すると短鎖脂肪酸が作られ、腸の粘膜のエネルギー源になると考えられています。

かぼちゃさつまいもりんごが腸活食材としてよく挙がるのは、この水溶性の繊維を含むためです。

繊維そのものは加熱してもなくなりません。

ただし加熱でやわらかくなることで、水溶性の繊維は溶け出しやすくなります。

逆に不溶性の繊維をそのままの形で残したい、つまり便のかさを増やしたい場面では、加熱の有無より切り方のほうが影響します。

どちらを足すかで進め方が変わる点は、犬猫の食物繊維の摂らせ方で詳しく整理しています。

判断材料3: 水分を足したいのか

野菜の重さの多くは水です。

生のまま与えれば、その水分はそのまま体に入ります。

ゆでると水に成分が溶け出し、蒸すと水分が抜けにくい、という違いもあります。

水をあまり飲まない子の水分補給を食事から支えたい場合、ゆで汁ごと使える形にする、あるいは加熱後に少し水分を足して与えるといった工夫が使えます。

特に猫はもともと水を多く飲む動物ではないため、食事に含まれる水分の比重が大きくなります。

犬と猫では、そもそも意味が違う

ここが見落とされやすいところです。

にんじんに含まれるβ-カロテンは、体内でビタミンAに変えられる前駆体です。

犬はこの変換ができるとされていますが、猫は変換が苦手で、ビタミンAは動物性の食材から直接とる必要があると考えられています。

同じ一切れのにんじんでも、犬にとってはビタミンAの材料になり、猫にとってはほぼ繊維と水分でしかありません。

猫に野菜を足すときは、ビタミン補給を期待するのではなく、繊維と水分を少し足すという理解にとどめてください。

生か加熱かに関係なく、与えない食材

使い分けの話に入る前の前提として、こちらを先に確認してください。

  • ねぎ類(玉ねぎ、長ねぎ、にら、にんにくなど): 加熱しても犬猫の赤血球に害があるとされています。スープや炒め物に溶け込んだ状態も同じです
  • ぶどう、レーズン: 犬で腎臓に重い障害が起きた報告があります。量との関係もはっきりしていません
  • 味のついたもの: 人用の煮物、炒め物、ドレッシングをかけたサラダは、塩分や油の面で別の問題になります

生か加熱かは、この関門を通った食材だけの話です。

避けるべき食材については犬猫のおやつの選び方にもまとめてあります。

よくある誤解: 野菜を増やせば腸が整う

繊維が腸内細菌のエサになるという話が広まったこともあり、野菜を増やすほど腸によいと考えられがちです。

ここは正直に書いておきます。

増やせばよいというものではありません。

繊維を急に増やすと発酵が進みすぎて便がゆるくなることがありますし、不溶性の繊維ばかり増えて水分が足りないと逆にかたくなることもあります。

総合栄養食を食べている子では、トッピングを増やすほど全体の栄養バランスが薄まる方向にもはたらきます。

トッピングは、全体から見れば一部にとどめておくのが無難です。

おやつやトッピングを合わせて1日のエネルギーの1割程度までという目安がよく使われます。

増やす前に、いまの主食が適量足りているかを先に確かめてください。

そして何より、変えたら便チェックです。

合っているかどうかは、うちの子の便が教えてくれます。

迷ったときの決め方

整理すると、こうなります。

状況向いている形
かたい根菜を与えたいやわらかく加熱して小さく切る
水分を足したい生、またはゆで汁ごと
便のかさを増やしたい加熱の有無より、細かくしすぎない
丸のみするタイプの子加熱して小さく切る
はじめて与える食材加熱して少量から

迷ったら加熱して小さく切る。

これで消化の面では大きく外しません。

そのうえで、水分を足したいなど別の狙いがあるときだけ生を選ぶ、という順番が現実的です。

新しい食材を試すときは、ほかのことを同時に変えないでください。

フードも一緒に切り替えると、便が乱れたときにどちらが原因か分からなくなります。

切り替えの進め方は犬猫のフードの切り替え方にまとめてあります。

ここに書いた内容は一般的な知識の紹介であり、獣医療ではありません。持病がある子や治療中の子では、食事内容そのものが治療の一部になっている場合があります。食事を変えるとき、便の乱れが続くときは、動物病院で獣医師にご相談ください。